前: 全日本カブ耐久2024GW大会 - 青パーカーの書き散らし
全日本カブ耐久のGW大会が終わり、8耐が終わり、今年の夏はなにをしようか、と大型連休のたびに暇になる空っぽな人間のようなことを考えます。
実際にはその通りで、ゆるーく社会人をやって5年が経過し、そろそろ将来のことを考えるべきか、ううむ、と考えては放棄し、また考えるを繰り返す日々。
くそォ。
さいきんはバイクに乗ってない。
きっとバイクで長時間走るってのは大事な行為だったんだ。
頭の中を空っぽにして、バイクを駆ることだけに集中して、走り終わったら疲れてそのまま寝る。それだけで無駄なことは考えなくて良くなる。
なんかムシャクシャしてきたな。
北海道行こう。
(全日本カブ耐久のレポートは記事後半)
お盆前半戦

乗り込んだのは鉄道。
使うのは例のごとく青春18きっぷ。
バイクは暑いからヤダよ...。
駅の端末でピポパピして発券して、上野東京だか湘南新宿だかのラインで高崎、そこからは冬には大雪に変わる上越線で水上、宮内...。
ボックス席の進行方向を向いて左側の片端に縮こまって土合駅、越後湯沢、と北に進むたびに相席のメンバーが入れ替わる。
山ガールマダムたちのあと、50大半くらいのおじん'sが来て、こんなところ冬はいいけど今来たってなんもねえべ、とぼやいた。全くその通りで、車窓から見える越後湯沢には青々とした田と、出番を待っている除雪機くらいしかなさそうだった。

この時期卒業を予定していたVtuberのアーカイブ配信を見て涙し、クソをして、宮内駅で乗換えたのちに長岡。
フレンドでスパゲッティと餃子を食べて、駅の酒屋で試飲したら酔ってしまい、遠く新潟の地に引っ越し移住された"カブ界の鉄人"Baker7氏のお供え物にした。
...ん、お盆、お供え、日本の夏。
こころ安らかなり。
新発田からGV-E400系の羽越本線に乗り換えて酒田を目指す。
デイリーヤマザキでオニギリとじゃがりこを買った。

村上で1時間ほど待ち、同じ列車で再び酒田行き。
間島駅で特急の通過待ち。
笹川流れの中腹に位置する勝木(がつぎと読む)に旅館か民宿を取ろうとして3件後で電話をかけたが、満室か休日とのこと。さて、どうしようか。じゃがりこを食べながらドナウの旅人を読んでいると勝木駅についた。
駅の周辺を少し歩いてみたが、なるほど勝木にはなにもない。
GoogleMapを見ると、海沿いを走る345号と内陸7号の交差点の近くにある温泉に入る。歩いていると、ツーリング中の大型バイクが通り過ぎた。
たどり着いた温泉は、ゆり花温泉という平成中期〜後期頃の風情を残した建物で、男風呂は6人用の洗面台と湯船の間が2mである。湯船に入ると、ちょうど目線の先に6人の男のケツが見える。
男たちは、空が白くなってきた、今日は釣れない、明後日から台風じゃから様子見だ、と漁師らしい会話を繰り広げている。私は合計12のケツの山を眺めながら、自分がこの先どうしたいのか、どうするべきなのかを見失っていることに気がついた。

休憩室で一本130円の解凍フランクフルトを頬張り、牛乳コーヒーを啜る。
私は酒田に行くこともできるし、この海と野しかないとみえる勝木の原っぱで一夜を過ごす用意もある。どちらを選んでもなにも困ることはない。
だが今日の寝床のことよりも、休憩所の隣で団欒する10人もの大家族に思考が持っていかれる。彼らはいま、私の幼少の頃体験した親戚づきあいのような、人情というよりも強固であたたかでノスタルジックな"家族"というものをやっている。
この感情は羨望なのだろうか。それとも後ろめたさなのだろうか。
27年生きてきて、最初の1/3は家業の民宿の傍らで、仕事とプライベートの別け隔てがない人たちの中で育ってきた。その後は京都の海沿いの大自然のなか同じ志もった仲間と学生生活を送った。けして人との付き合いは上手ではなかったし、それでも人の暖かさを真っ当に浴びて育ってきたと思う。
そして就職して大都会に生きるようになって、日々、自分がいかに孤独なのかを感じる。
人が多いからこそ、その巨大な空虚が己を押しつぶしてくる。
空虚さは、自分が観測している主観にすぎない。
それゆえにこの空虚さを満たすことができるのは、自分しかいない。

センチメンタルだった。
仕事、プライベート、推し。
自分を構成するすべての要素がなに一つうまくいかなかった。
どこか自分を無償の愛で囲ってくれる安全圏に帰りたい気分だったが、そのような場所はどこにもない。
だからせめて、いつもと違う場所に居たかった。
もう一駅、あと一駅、と列車に居座る。
これっぽっちも予備動作をせずに適当な駅で降りて、夜の風で涼む。
夏のにおいがむんむんする。

星を見て自分はちっぽけだと思うことはある。
その時に周りに誰の存在も感じず、虫や動物の気配を少し感じている方が、よりいっそう孤独感が増して、自分のちっぽけさにも拍車がかかる。
どうしてだろう。
昔バイクで旅をして回った時に感じたちっぽけさを今になってもう一度感じるのは。
あの時、自分はちっぽけな存在だと知って、そうしてその場所に身を置き続けて、すでに自分の一部になったと思っていたのに。
5年間も人と一緒に働いて、その気持ちが薄れてしまったのだろうか。
キリギリスと鈴虫と波の音が聞こえる。
時たま、うみねこが遠くで鳴く。
巨大なスクリーンに映る夏の大三角と、その背景に横たわる白い河は、答えを与えてくれるわけがなかった。
都会になんて出るもんじゃない。
私には都会の生き方は波長が合わないのだ。
俺にはもうこれしかなかった。
今夜は野宿でどうぞ。
次: 24.08 26歳なつやすみ#2 (東北-北海道) - 青パーカーの書き散らし
スポンサー飲み物: CUB COMBAT THE UNSUNG HEROES