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光
明るくなった世界が差し込んでくる。
昨夜大合唱していた虫たちの声はいつのまにかなくなり、小さな鳥たちの声と、波の打ち寄せる音に変わっている。
ユニクロのウルトラライトダウンジャケットを着ていなければ一夜を過ごすことはできなかっただろう。そのくらい秋田の夜は肌寒かった。
昨夜は温泉を出てから、秋田市まで1時間半手前の駅で降りた。
夜11時に駅に降りて、ファミマでかったおにぎりを食べ、それから浜辺で寝たのだ。
体を起こし得て15分ほど浜辺を歩いていると、空の色と共に意識が明晰になってきた。
野宿は芸術である。
寝るという目的だけに特化しており、快適性の一切が無い。
だがそのような環境の中でも、寝る場所、角度、隠れ度合い、騒音、光、人との距離など、そうしたプリミティブな要素の噛み合いのうえ、己の心理的なキャパシティとの折り合いの末に、初めて「寝る」という欲求を満たすことができる。
不快との戦いであり、最低限自分が「寝れる」と思うボーダーラインをクリアする戦い。
シンプルながらも、自己と対峙するこの面白さには不思議な魅力がある。
さて、今日は北上しよう。
道川駅から始発に乗り込んだ。
北上
道川から4駅で秋田駅につく。
秋田駅からは18きっぷに押印して、タッチでGoで再び改札をくぐったら、羽越本線の到着ホームの真横のホームに入る新幹線に乗る。
道川から秋田の間の短い時間で多くのことを考えた。
実は太平洋で発達した台風5号が、当初の進路から南に逸れ、東北を横断する形で12〜13日に上陸するという。
当初の計画では、13日の夜に小樽からのフェリーに乗り、14日の夜に舞鶴に到着するはずだったが、この日は8月11日。12日の夜にはシケが予想され、フェリーは結構する可能性が高い。
このままでは福井へ帰れなくなってしまう。
私は16日の朝早くから鈴鹿で仕事がある。
眠い頭をフル回転させて、取れる手段を3つ出してみた。
- 陸路を南下する
- 強行突破・本日中にフェリー
- ヒコーキ
陸路を南下するというのは、これまでジリジリ攻めてきたのに同じ道を通って撤退するようでなんとなく嫌だった。そして、ヒコーキは性に合わない。
それならば新幹線を駆使してできるだけ時間を短縮し、函館本線で一度は乗ってみたいキハ40に乗り、フェリーで帰る方法を取ろう。
秋田から盛岡、盛岡から函館新北斗、そこから鈍行を使って小樽へ。これなら20時台に到着するから、フェリーに間に合う。
大曲でスイッチバックし、山に沿って在来線の軌道を走るへんな新幹線こまちに乗り込んだ。
盛岡駅で北海道新幹線に乗り換える。
世界最長の海底トンネルに入り、程なくして世界がふたたび明るくなる。
何の感慨も無い。ただ乗っていれば、そこは心のふるさと北の大地だった。
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