前: 22.12.30-3 歳末鉄道紀行#4 小浜ノ国日記 - 青パーカーの書き散らし(旧:heliumu-cublog)
1月4日
古き良き手改札の小浜駅。
昔は必ず1時間に一本は走っていた小浜線も、随分歯抜けのダイヤになってしまった。
小浜線といえば、北陸新幹線は小浜を通るルートになったはずだ。
でも小浜に新幹線を招いてどうするんだろうか。
小浜線は並行在来線扱いになって、それこそ地元の交通の便は悪化するだけではないか。第三セクターになればまだ良いけど、廃線になれば...。
それに、駅が小浜にできるとは限らない。
5日間ほど滞在した小浜での最も大きな収穫は、以前帰国したときにできなかった話を祖母とできたことだ。
まずは私が跡継ぎとなるための法律上の準備ができたということ。
そして、固定資産の詳しな内訳。
相談という相談がこれまで無く、いつも関白な祖父の脇役と徹していた祖母が「家を頼む」とはっきりと私に向かって口にした。
▲小浜市民のソウルフード?、丸海のタイカツを車内でいただく。
あかおのカレー焼きも小浜のソウルフードだと思います。
祖父は祖母や子供に保険を掛けていたが、自分には一切掛けていなかった。
更に、売掛の未払いが大量にあった。
祖父は病床に伏すまで一切こうした財布事情を周りに伝えておらず、最後には認知症も起こっていた。顔が広く、いつも人の上に立つような人物だったことから止めるものもいなかったのだと思う。
祖母はそれらを一段落させ、最初の冬をこうして乗り越えようとしていた。
金沢駅でIR・あいの風1日フリーきっぷを購入する。
IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道...第三セクターとは、つまりこうなることらしい。金沢駅も、どの鉄道会社の改札なのかがよくわからなかった。
もしも小浜線が第三セクターに移管されるなら、会社の名前は『若さぐじピチピチ鉄道』にしてほしいなと思った。
えちごトキめき鉄道の車窓から。
筒石駅というヤバそうな駅があったので、次の列車が来るまでの間降りてみた。
息が詰まるような閉鎖空間で、少し階段を登るとメインの大階段が現れる。
そうすると、風が更に深い地下からふいて来ているので多少はマシになる。
にしても駅外観も相当の様相で、まるで駅っぽくない。
地上はそこそこ高さがありそうな場所で、近くを高速道路が走っていた。おそらく北陸自動車道と思う。
面白かったのは駅舎(青色の屋根)は外気温近いが坑道に一歩入れば暖かかったこと。
駅舎には「駅ノート」というものが置いてあって、鉄道マニアに愛されていることが分かる。記念に⑤のノートに書き込み。
筒石駅では1時間ほど待って次の車両に乗り込んだ。
直江津駅まで行くと随分と冷え込んでいて、久しぶりに食べたマクドナルドが美味しかった。
この日は直江津の快活クラブで一泊。
あとがき
私はおじいちゃん子でした。
幼子の頃から祖父の建てた家で暮らし、出生に際してイザコザがあったらしく生みの父はおらず、今の父親は二代目父親です。
そんな事もあって、世間様の父親の役目を祖父は全うしてくれて、二代目父の元で生活をするようになった保育園年長半ば以降も色々な面倒を見てくれました。
祖父の口癖は「heliumuが家を継ぐんや」でした。
もちろん、周りの大人は子供には自由な道を歩ませたいと考え、止めに入ります。
私はその言葉の意味を本当に最近になるまでよく理解しておらず、周りの大人が恐らくそうであったように鬱陶しいとさえ思ったこともあります。
祖父は小さい頃に、海で目を離したすきに弟を波にさらわれて亡くしました。
3人いる子供の内、男は1人だけですが、不幸なことに全身不随になり跡を継ぐことができません。
そうした理由で、跡継ぎは私しか居ないんです。
話が少し変わりますが、米澤穂信の『遠まわりする雛』という小説の話をしましょう。『氷菓』から続く古典部シリーズの4巻目です。
岐阜県高山が舞台の世界で、豪農千反田家の娘 千反田えるが主人公の折木奉太郎と夕暮れの縁側で話をします。
「どんなルートを辿っても、わたしの終着点は、ここ。ここなんです。」
「私はここに戻ることを、嫌だとも悲しいとも思っていません。(中略) 千反田の娘として、ある程度の役割は果たしたいと思っています。」
えるは、千反田家の娘としての役目を担うことを、高校生ですでに確信として予感していました。
聡明な娘で、どうすれば豊かになれるか、貧しくならないかを戦略立てて考えることもやっています。
祖父にとって、私は希望だったのでしょう。
でも、私は将来どう在りたいかを明確に思い描くこともせずにのらりくらり高専に行き、都会に出て、隔世で跡を継ぐということの時間的猶予の無さをも十分に理解せず、こうして今になりました。
私は、同じ年頃に彼女のように真剣に将来を考えることができず、そして今もそれは同じです。
でも当たらずとも遠からず、私は網元、千反田は庄屋、そして氏子総代の家系という似たような境遇です。
そんな彼女が、土と水しか無い、最高とも思えず可能性に満ちているとも思えない土地で生きていく選択をできるのだと思うと、少しばかり勇気を貰うことができるんです。
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