青パーカーの書き散らし

旅の合言葉は「宗谷岬でまた会おう」。旅の記憶と、知識の記録。

24.08 26歳なつやすみ#3 (北海道-)

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心のふるさと

新幹線の快適な室内とは打って変わって、気だるげな夏の風を思う存分に浴びて列車は森の中を進む。
少し蒸し暑いが、風が吹くと湿気を飛ばしてくれるような爽やかな風だ。
建付けの悪い窓を上げて、車内はハッパの匂いに満たされる。

新幹線がたどり着いた新函館北斗駅では、どんだけ乗るねんって量の乗客が1番乗り場の特急「はこだてライナー」へ乗り込んでいった。改札の出口にはたくさんの人が改札側を向き、家族が向かってくるのを今か今かと待っていた。
私はそんな家族連れを傍目に見て、一人2番線で列車を待った。
30分待って来た列車が、今年いっぱいでなくなるというキハ40だった。

見るからに古めかしい。これが見たかった。

WWWがあるこの時代、自分で写真を撮らなくとも誰かが撮ったものを眺めることができる。だが、自分自身の記録のために撮るという価値は、フィルムカメラの時代から普遍的なはずだ。個人的な撮影が溢れかえっているからと言って、自分が撮った写真の価値は自分にしかわからない。わからなくていい。

へんな加工をすると陳腐になってしまうが、敢えて新しいことをしてみる。
今回利用しているのはiPhoneのDazzカメラというもので、様々なフィルムのシミュレーションができる。
他にはFUJIFILMのX-pro2。型落ちになってしまった。

車内に入ると少し燃料のような匂いがした。灯油か何かかもしれない。
走り出し、ギアチェンジがしばらく無く、とにかく遅い。
むかしの人はこのような車両のことを"鈍行"と言ったのだと理解した。

エンジン音か排気音かわからないが、少し細い感じの音がする。
けしてカン高い音というわけではないが、繊細な音だ。

函館新北斗駅から、仁山駅に入る手前でエンジン音が消え、減速操作に入る。減速エネルギーを拾うような仕組みは無いようだ。車両がホームに止まると、開けていた窓の外からの涼風が途絶え、束の間熱帯に戻る。

車内には扇風機のボタンが配置されているが、扇風機はどこにも無い。車両番号はキハ50-1801とある。進行方向に向かって左手の11Dの席。
足回りは幾分とコシがある。

再び駅を出る際にはディーゼルエンジンを幾分気怠げに噴かし、またノロノロと加速を始めた。

ちくしょう...なんでここはこんなに懐かしいんだ...出口はどこだ、早く出ねえと懐かしくて頭おかしくなりそうなんだよ!

12:28 森駅に着いた。

ワイ「ここ...なにもないし、乗り換えめっちゃ時間あるんですけど、どうしたら?」

?「皆さん左の方に歩いていかれますね」

森駅の左手にある柴田商店でいかめしを手に入れて、18きっぷで再びホームに戻って、石に腰掛けてジョージアとともに昼食とする。

ホームからは海が見える。うみねこが岸壁の上に大量にいる。
彼らは餌を探すでも無く、毛づくろいをするでも無く、8月の気怠げな陽の下、なすがままに蒸されている。

階段を登って、向こうのホームに行ってみる。

自販機のコンプレッサーの低音か、波の音か、うみねこの鳴き声しか聞こえない。
2、3人の人は思い思いに写真を撮ったり、それから改札を出て待合室に戻ったりして、誰も急いでいる素振りなんかない。気が狂いそうだった。とにかく気が狂いそうだった。

じぶんひとりが、ここではない遠い場所に行こうとしている。
こんなに心穏やかで、時間を気にせずにゆっくりしていることに焦っている。
来たこともない場所に過去を投影して、屋のように飛んでゆく都会の時間感覚を忘れ、このままゆっくり生きるだけでもいいんだと思うことが心底怖かった。

この列車はここで運休です。

森駅の3番線に入った鈍行は1両編成で、私が乗ったときにはすでに立ち乗りもギリギリという状態だった。そんな状況の中、ダイヤ上の出発予定の13:50の5分前に、さわやかな香辛料を香らせた青年たちがちょうど10人追加で乗車したことで、車内は通勤列車のような容態である。14時になっても発車しない列車の中で、香辛料の若者と肘置き代わりの整理券ボックスを無言で奪い合った。

ことのあらましとしては、私が乗ったキハ150形よりも先に出るはずだった特急が遅れたところから始まる。どうやら急患が出たらしい。

だが30分が経っても列車は出発しなかった。
その代わりに車内放送で、八雲駅長万部駅に降りる場合に限って後続の特急列車を利用しても良いと案内があった。乗客の7割ほどが降りて行き、残った乗客の一部も不安になったのか、1割くらいが反対側のホームに向かった。

私は16:35に長万部を出る小樽行きに乗れればあとはどうでもいいので、この列車が16:35までに長万部に着くのかを確認しようとした。しかし、汗を垂らした駅員からの回答は"接続はわからない"の一点張りだった。どうしたものか。通常ダイヤならば1時間と6分で長万部に着くはずで、片や特急列車は座席は満車らしく"デッキ"になってしまう。このまま悠々と座って待つことにした。
列車は14:32、定刻を42分遅れで発車。

そうした結果発生したのがこの垂れ幕だ。
八雲駅に到着したやいなや、駅員が乗り込んできて二言。
「この列車はここで運休でーす!降りてくださいーい!!」らしい。

どうやら現実が目を覚ましにきたようだ。
眠い眼をこすって八雲駅の待合室に行く。
やれやれ、面白くなってきた。

チャカチャカチャカチャカ (ここでGet wildが流れる)

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おまけ


キハ40形 サービスショット


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